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【開催レポート】いたずらクリエイティブ集団UROによる特別講義「展示概論」

【開催レポート】いたずらクリエイティブ集団UROによる特別講義「展示概論」

2024年11月、デジタルハリウッド大学(DHU)は、全4回の特別講義「展示概論」を開講しました。

担当講師は、DHU出身者を中心に構成されている「いたずらクリエイティブ集団URO」の皆さんです。

UROは2021年に結成されて以降、渋谷区役所旧第二美竹分庁舎、上野アメ横商店街、新潟県魚沼市の「大湯アートフェスFLOU」など、さまざまな場所で展示会を実施。グループで企画・制作・広報・展示などを行っており、その経験から得られた知見を在学生に伝えてもらいました。

今回は「展示概論」第2回:みせて勝つ!作品バトルの攻略法!の様子をレポートします。

攻略法①あえての縛りプレイ

今回の特別講義でUROは、既存アイデアに埋もれないための7つの攻略法を紹介しました。

好きなことや得意なことがバラバラなメンバーが集まっているURO。ときには意見が衝突することもありますが、グループでアート作品を作り続けられている理由があると言います。

「UROでは、あえてグループのメンバー全員に縛りを設けています。①ニヤニヤできるいたずらをつくります。②愛されるいたずらを考えます。③テクノロジーを駆使したいたずらをします。④シュールないたずらを大切にします。⑤いたずらで人を傷つけません。このいたずら5ヶ条があるからこそ、同じ方向を向いている状態を保っています」

またUROでは、ピーター・F・ドラッカーが提唱したMission(存在意義)とVision(理想の未来像)、Value(行動指針)を定め、これらをベースにして作品を作っているそうです。

長期間に渡ってチームで活動をする場合は、このような縛りを設定し、迷ったときやぶつかったときに立ち返ることが大切であると話しました。

攻略法②感情コントロール

次に、独りよがりの作品にならず体験者を楽しませるよう、受け手の感情を意識する方法を解説しました。

紹介したのは、体験者が段階別に何を感じるかを洞察する、エモーショナル・ジャーニーという手法です。UROが制作した『BOT-ON』は、この考え方がもとになって設計されました。

画像引用:URO公式ホームページ『BOT-ON

「『BOT-ON』は情報過多の時代に登場したトイレシステムで、クソみたいなつぶやきを水に流すことができます。体験者には、作品を見た瞬間“ただのトイレじゃなさそうだ”と驚きと興味をもってもらい、作品に関与してもらいます。体験者は、ツイートしたり、音声入力システムを使ったりしてトイレットペーパーに文字を印字しようとします。しかしすぐに印字はされません。ここで焦れったい気持ちにさせ、“早くトイレに流したい”、という気持ちを膨らませます。そして20秒後、吐き出された文字が水に流されていき、最後にスッキリさせるようにしています」

このように、体験者の感情を揺さぶるのも、エンターテインメント作品に仕上げる方法であると紹介しました。

攻略法③炎上を見抜け

作品を世に出すと、誰がどんな評価をするか分かりません。新卒で広告代理店に就職した平松さんは、炎上リスクを低くするためのポイントを紹介します。

特に重要だと言うのが、作品を公開する前に第三者視点を取り入れ、特定の人を排斥していないか、戸惑わせることはないかを確認すること。

たとえば、平松さんはUROで韓国へ出張へ行く際、あらかじめ営業資料のチェックを韓国の文化に詳しい方へ頼みました。現地の担当者にも理解してもらいやすいよう、『BOT-ON』のトイレットペーパーにはハングルを印字したのですが、それに対してNGが出たと言います。

「その方が言うには、アートに理解がある方に対してなら問題ないが、初対面なら韓国語でない方が良い。多くの韓国人はハングルを魂そのものと考えているので、それをトイレに流す行為は好ましくない。そう指摘いただいたんです」

このように、自身が持っている視点以外も作品に取り入れ、作品の見せ方に配慮する必要があることを紹介しました。

攻略法④自己ブランディングすべし

アート市場が縮小する中で、自由な環境で創作活動ができる“アーティスト”としては食べていけないだろう。外部からの刺激を得られなければ、いずれ表現の幅が狭まる。大学在学中にそう考えたUROのメンバーは、卒業後に何らかの組織に所属し、“クリエイター”としても活動するようになります。

「ここで話すクリエイターとは、クライアントの要望に応じ、数ある縛りの中で成果物を制作する人を指します。クリエイターとして生きていきたいなら、まずは就職活動をするのがおすすめです。ただし、たとえばデザイン系企業の選考を受ける場合は芸大生・美大生と、広告代理店を受けるなら旧帝大生や名の知れた私大生と戦わなければなりません」

広告代理店へ就職した平松さんは、就職活動時に周囲との差別化を図るため、大学在学中に制作した作品集(ポートフォリオ)を提出します。得意と好きをかけ算し、オンリーワンの強みを全面に打ち出して就職活動を乗り切ってほしいと話しました。

攻略法⑤1.5時間だけ東京ディズニーリゾートに勝つ

ここからは、実際に展示会を開催する場合の攻略法を解説しました。

大前提として、お客さんに展示会に足を運んでもらうためには、東京ディズニーリゾートのような施設にも勝たなければならないと話す平松さん。

来場者数の目標設定、ターゲットの明確化、作品のストーリーやテーマの確立、宣伝媒体や宣伝内容の決定、メディアリレーションの構築など、展示会開催前にどう情報を届けるか。ほかのコンテンツに埋もれず、1.5時間だけ自分たちに使ってもらうために、作品を制作する前から考えなければならないことがたくさんあると紹介しました。

攻略法⑥“ついで”に大便乗

UROは、展示会のみを目的として来場してくれる人だけでなく、買い物ついで、ほかのイベントついでに立ち寄ってくれそうな人も狙って、展示会場を選定していそうです。

たとえば、上野アメ横商店街で展示会を実施したのは、ちょうど桜が満開のタイミング。上野公園の花見客へ、「お散歩ついでにお立ち寄りください」という言葉を添えて、集客していったと言います。

都市部で展示会をするとなると会場使用料が高くなりがちですが、協賛企業を見つけ、なるべく人の往来が多い場所で開催するのがポイントであると話しました。

攻略法⑦エンターテイナー接客

最後に平松さんは、「展示会開催中はなるべく作品の前に立ち、プロフェッショナルとして、エンターテイナーとして来場者に向き合うべし」と展示会での立ち振る舞いについて解説しました。

作者が展示会場に顔を出すことは、来場者にとって、本人から詳しい解説を聞けるというメリットがありますが、作者にとっても多大なメリットがあると言います。

「目の前の来場者から、リアルタイムでフィードバックをいただけるので、作者が持ち得なかった新しいアイデアや視点を得られます。さらに展示会中にそれを反映できるのは、会場で接客する大きなメリットのひとつです。今後卒業制作をキャンパス内に展示する機会があると思いますが、なるべく作品の前に立って、自分の作品を言葉でも楽しませてほしいと思っています」

展示会の計画、作品の制作、開催を経て、毎回最後に5時間程度の反省会を行うというUROのメンバー。次の展示会につなげるため、このサイクルを繰り返すことが重要であると強調しました。

質問タイム

最後に、学生からUROのメンバーに対して質問があります。

Q. 皆さんお忙しいと思いますが、会議はどれくらいの頻度で行っていますか?

平松:必ず実施する定例会議はありませんが、展示会が迫っているときは週2回実施します。ただしメンバー全員が集まることは難しいので、会議の文字起こしや要約をしてくれる「Notta」というツールを使って、参加できなかったメンバーには情報共有をしています。

Q. めちゃめちゃ刺激を受けたな、と感じることはありますか?

大溝:ほかの展示会を見に行くと、かなり刺激を受けられます。自分が主催するなら、と考えながら体験することが多いですね。

川口:ありきたりな回答になってしまうかもしれませんが、いろいろなものに触れるのは大事ですよね。クリエイティブな会社で働いていると、同じジャンルの人と関わることが多くなってしまうので、知らない業界の人と喋ったり、知らない場所に行ってみるのは刺激になります。

平松:やっぱり海外の人と関わるのは刺激になります。川口と韓国出張へ行ったときに、現地の同世代のエンジニアと交流する機会があったんです。その人の働き方や、韓国で流行しているキャラクターの共通点など、いろんな話を聞き勉強になりました。

Q. 世界にインパクトを与えた、と感じる瞬間はありますか?

川口:今回紹介した『BOT-ON』は、上野や神楽坂などで展示した際に海外の人に見てもらいましたよね。自分の母国語をトイレットペーパーに印字して流す人もいて、日本人だけではなく海外の人も楽しめる、言語の壁を超えた作品になっていると感じました。我々は言葉で作品を説明しがちですが、見たら何を触れば良いか分かる、ノンバーバルな体験型コンテンツを作るのが大切だと思っています。

グループで展示会をするためにはどんなアプローチが必要か、いたずらクリエイティブ集団UROならではの特別講義「展示概論」の第2回が終了しました。

受賞歴

デジタルハリウッド大学 卒業生 金森慧氏監督作『Origami』第51回学生アカデミー賞アニメーション部門銀賞を受賞 日本作品初!

2023年度卒業生の金森慧さんが卒業制作『Origami』が、2024年10月14日にロンドンで開催された
「第51回学生アカデミー賞」(STUDENT ACADEMY AWARDS)のアニメーション部門において銀賞を受賞しました。

2023年度卒業生の金森慧さんが卒業制作『Origami』が、2024年10月14日にロンドンで開催された
「第51回学生アカデミー賞」(STUDENT ACADEMY AWARDS)のアニメーション部門において銀賞を受賞しました。