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「48H Virtual Production Filming Contestに参加した3名が語るバーチャルプロダクションの難しさと魅力」

「48H Virtual Production Filming Contestに参加した3名が語るバーチャルプロダクションの難しさと魅力」

今回の記事では、「48H Virtual Production Filming Contest」に参加された羽生優さん、柴田 流維さん、熊田 滉平さんの三名にお話を伺いました。コンテストに参加した感想や、48時間という限られた時間の中で映像を制作する大変さ、バーチャルプロダクションの魅力と皆さんがこれから目指すものをお話しして頂きました。
※同コンテストに参加された鈴木康太さんはインタビュー当日体調不良のため欠席

48H Virtual Production Filming Contestに関して

―「48H Virtual Production Filming Contest」に参加しようと思ったきっかけは?
羽生さん
高校生の時に、「マンダロリアン」というスターウォーズドラマシリーズの作品でバーチャルプロダクションに興味を持ったんです。スターウォーズが大好きな僕は、もう絶対やりたいって思ったんですけど、高校生1人にはやはり難しくて。高校生の時に参加した「東京国際プロジェクションマッピングアワードVol.7」で出会った教授の大学で色々学ばせてもらって、今年やっと実現することができました。

―念願だったんですね。当日のメンバーや役割は?
羽生さん
コンテストに参加したメインメンバー3人に関しては、私(羽生さん)が今年の2月に設立したTORCH VISION STUDIOSという映像チームから、バーチャルプロダクションやりたい人って言って募ったメンバーで構成されています。
メインの総指揮的な部分、監督的な部分は私(羽生さん)が担当しました。柴田くんがUnreal Engineで3Dモデル、背景の制作であったりとかをメインで担当してもらって、鈴木くんに関しては、バーチャルプロダクションのシステムを動かす部分を担当してもらいました。
熊田先輩は、役者探すのを手伝ってもらってる中で、なかなか見つからず、迷ってた時に、じゃあ僕がやるよって言ってくださって、引き受けてくださったんです。

熊田さん
人がいないならやってみようかなって。特撮サークルを作ったこともあって、新しい撮影方法だったり、そういうのも見ておきたかったんです。

―それぞれ参加してみてどうでしたか?
柴田さん
最初から難しいことは分かっていたんですけど、実際にやってみて、やっぱり難しかったです。とにかく時間がなくて。自分の技術不足も感じて、もっとちゃんと勉強した方がよかったなと思いました。

熊田さん
技術自体は最近の日本の特撮でも取り入れられているので、存在自体は知っていたんですけど、実際に見て、液晶でかっってなりました。あとは、今回僕はゲスト(役者)だったので、実際に彼らがトラブルに対処しているのを見て、この人たちは本当にすごいことに挑戦してるんだなと、とにかく頑張れ!と思ってました。

羽生さん
やっぱり48時間というのは、経験したことがない領域だったので、難しいなと思いました。実際、持ち込んだデータが読み込めなかったり、カメラが動かなかったりで、その対処で1時間半も取られてしまって。
別の大学の方と同じ撮影スタジオを使わせていただいていたので、自分たちの持ち時間が3時間くらいしかない状況で、もう手探り状態でした。

―そのトラブルはどう乗り越えたんですか?
柴田さん
そもそも持っていく背景のデータをできるだけ軽くしてもっていきました。

羽生
今回は(バーチャルプロダクションを)初めてやるので、何が起こるかわからなかったので、なるべくファイルの容量を事前に決めておいて、とにかく軽くしておいたおかげで、実際にいろいろ起きても対処することができました。

―事前に色々決めていたんですね
羽生さん
絶対に48時間がきついことはわかっていたので、2,3週間前から打ち合わせを重ねて、こだわる場所とそうでない場所などを事前に検討してから望みました。

ー48時間というのはどんな流れだったんですか?
羽生さん
初日の18時にテーマが送られてきて、それを基にストーリーを決め、絵コンテを切り、深夜0時頃に全員に共有しました。そこから、柴田君と鈴木君にUnreal Engine上でCG背景を作ってもらい、翌朝データを確認し撮影スタジオに直行しました。撮影が終わったら、帰ってそこから翌日の18時までずっと編集と合成、CGショットの制作をおこなっていました。

―テーマも当日なんですね
羽生さん
テーマも当日です。去年が「Light」という言葉だったので、今年もそういう感じ(文字テーマ)かなと思っていたんですけど、今年は画像が3枚送られてきて、その中から1枚選ぶ感じだったので、予想の斜め上でした。

熊田さん
ちなみにストーリー作るのにどれくらいかかったの?

羽生さん
大体3時間くらいですかね?
テーマが1つ決まっているよりかは自由にできるので楽では合ったんですが、コンテスト前に考えていたプラン(ストーリー)が全く使えず、1から考えなければいけなかったので、かなり大変でした。

柴田さん
最後の編集で僕がレンダリングを若干ミスってしまった部分があって、最後本当に焦りました。

羽生さん
最終的にCGショットのレンダリングが終わったのが締め切り10分前くらいで、映像の書き出しに関しては5分前とかでした。

柴田さん
最終日の12時間とかはご飯も食べすにずっと作業してて、それでもぎりぎりだったんで、作業スピード上げたり、時間を意識するのは本当に大事だなと思いました。

羽生さん
鈴木君はUnreal Engineに触りなれていたんですけど、我々2人(羽生さん、柴田さん)に関しては、Unreal Engineを今まで触ったことがないなかで今回の出場を決めたので、1か月くらいしか(Unreal Engineを)触っていなかったんです。

熊田さん
そもそもUnreal Engineは触っている人がDHUには少ないんです。優に言われて、Unreal Engine触れそうな人とか探したんですけど、あんまり見つけられなくて。

羽生さん
Unreal Engineはゲームエンジンなので、ゲームジャンルの人が多く、今回のノンゲームと呼ばれるジャンルの人が見つからなかったので、1か月かけて勉強しました。

熊田さん
そういえば、柴田君はノートパソコンだったっけ?

柴田さん
そう。自分が大きいデスクトップ持っていなかったので、グラフィックボードがついてるノートパソコンでやってました。

羽生さん
めちゃめちゃ大変でしたね。
デスクトップで開いても相当重いデータをノートパソコンでやってもらってたので

柴田さん
キーボードの部分で焼き肉が焼けるくらい(笑)

―相当大変でしたね。 
 今回のコンテストでそれぞれのこだわった部分はどこですか?

柴田さん
自分は、町の背景とか、若干失敗してしまった部分はあるんですけど、撮影に持っていくためにある程度データを軽くしないといけなかったので、そこをうまく容量を軽くしてっていう部分ですね。
背景の森林とかも、木を増やしすぎちゃうと重くて移せなくなってしまうので。

熊田さん
こだわったというか、大変だったのは、限られた撮影時間で、トラブルもあってという中で、なるべく1回で優の指示に答えるっていう部分です。かなり緊張はしました。撮影でカメラ持ったんですけど、普段持ちなれていないので、その扱いとかも大変でした。

羽生さん
世界的なコンテストだったので、特定の言語を使わずに、セリフなしで脚本を作っていたんです。今までいろいろな作品をとってきて、やっぱり細かい動作が後々のストーリーに反映されてしまうので、そういう部分をなくすために、短い時間ではあったんですけど、細かい演技指導はできる限りしたつもりです。
ただ、本当に(熊田さんの)演技がうまくて驚きました。是非、TORCH)の専属俳優になってほしいくらいです(笑)

バーチャルプロダクションの魅力

―バーチャルプロダクションを映像に取り入れる魅力とは?
羽生さん
よく比較されるものとして、グリーンバックと呼ばれるあとから背景を合成する技法があるのですが、その技法だと、グリーンを抜く手間もありますし、人に対してライティングと呼ばれる光のあたりを撮影現場や編集で調整しないといけないんです。それに対して、バーチャルプロダクション、特にインカメラVFXと呼ばれるものに関しては、LEDパネルが、後ろと横と上、場合によっては下にあるので、実写とほぼ同じ環境(ライティング)で撮影できすごく自然な合成になるという点が、バーチャルプロダクションの魅力だと思います。
ただ、従来の方法だと、撮影と同時並行でCGを作ることができたんですが、撮影の前にCGを作らなければいけないので、CGを作る時間が限られてしまうというデメリットはあります。とはいえ、一度1つの背景を作ってしまえばずっと使える点は、バーチャルプロダクションの強みですね。
※グリーンバックで撮影したものに対し、カメラの動きなどもすべて合わせた場合にバーチャルプロダクションと呼ばれる場合がある。今回の記事におけるバーチャルプロダクションはインカメラVFXと呼ばれる技法を指す

―バーチャルプロダクションの現状は?
羽生さん
実際に働いていないので分かりませんが、日本のバーチャルプロダクションがかなり遅れているという話はよく聞きます。実際、今回のコンテストも中国の学生がほとんど受賞しており、やはり日本以外ではバーチャルプロダクション教育が進んでいるのだと感じました。

学校によってはスタジオが常設され、授業などもあるそうなのでもう段違いなんですよ。
日本国内にもスタジオは増えてきてはいるんですけど、 日本の場合は個々の会社が小さなLEDスタジオを置き、自社内で完結させてしまうため、本当に宝の持ち腐れ状態なんです。

やっとVookとソニーPCLがこの間バーチャルプロダクションアカデミーというものを始めたんですけど、やはりバーチャルプロダクション教育がだいぶ遅れているのだと感じました。
なので、本当にデジタルハリウッド大学でもぜひやっていただきたいなと思っています(笑)

―掛け合ってみます(笑)
羽生さん
私がお世話になっている東京国際工科専門職大学の渡部健司教授やバーチャルプロダクション関係の方々も、日本の教育機関がもっと率先してバーチャルプロダクション教育を発展させるべきだと仰っています。
なので、最先端な技術を学び、様々な人と高めあうことのできるこのデジタルハリウッド大学だからこそ、できたら来年にでも取り入れてほしいです。
スタジオを常備は難しくても、授業とか、座学とかで、まずはバーチャルプロダクションを知ってもらうことが重要だと思っています。

それぞれの今後

―最後に、今後皆さんそれぞれどんな作品を作ったり、携わっていきたいですか?
柴田さん
自分が今後作っていきたいと思ってる作品は、「ARMORED CORE」というゲームのPVがすごく好きなので、やっぱ自分の制作したメカをうまく使って、リアルに近いPVみたいのを作れたらいいなって思っています。まだ、背景は練習中なので、背景をもっとうまく勉強して、自分の作ったメカのデザインをもっとうまく見せれるような背景を作れたらいいなって思ってます。

熊田さん
僕は特撮サークルを作ったので、もうサークル長自体は後輩に譲りはしたんですけど、後輩が出した案とか自分の要望として、やっぱり特撮サークルなので、そういう映像を作ってほしくて、年に2、3個は作りたいっていうことを言っているので、そういうのを作る、なんかちょっとした手伝いみたいなのができればなと思ってます。それで、ショートフィルムとかを文化祭とか、そういうので流せたらなっていうのを考えてます。
自分はちょっともう技術的なことをあんまり学べてないので、本当に撮影のお手伝いですとか、その程度しかできませんが、それをやっていきたいかなって思ってます。

羽生さん
そうですね。まず、現時点での目標としては、私が作った「TORCH VISION STUDIOS」を、 しっかりとした映像チームとして確立するところですかね。今回、残念ながらコンテストで賞を取ることができなかったので、今回の悔しさをバネに頑張っていきたいと思います。
年内中にもう1作作ろうと考えているので、それで、海外のコンテストで賞を取りたいと思っています。

作品リンク

渡部健司教授
https://master.digital-campus.info/?page_id=2

バーチャルプロダクションアカデミー:https://vook.vc/p/virtual-production

TORCH VISION STUDIOS
X:https://x.com/torch_vfx

Instagram:https://www.instagram.com/torch_vfx

note:https://note.com/torch_vfx

受賞歴

デジタルハリウッド大学 卒業生 金森慧氏監督作『Origami』第51回学生アカデミー賞アニメーション部門銀賞を受賞 日本作品初!

2023年度卒業生の金森慧さんが卒業制作『Origami』が、2024年10月14日にロンドンで開催された
「第51回学生アカデミー賞」(STUDENT ACADEMY AWARDS)のアニメーション部門において銀賞を受賞しました。

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