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開催終了
【開催レポート】特別講義「日本IP映像化の世界」——『スーパーマリオ』と『ワンピース』がつくる新しい未来
開催終了
【開催レポート】特別講義「日本IP映像化の世界」——『スーパーマリオ』と『ワンピース』がつくる新しい未来
日時
2023年12月5日(火)19:10-20:40
開催方法
オフライン
場所
デジタルハリウッド大学3F 駿河台ホール
2023年12月5日、デジタルハリウッド大学(DHU)は、藤村 哲也特命教授による特別講義「日本IP映像化の世界」——『スーパーマリオ』と『ワンピース』がつくる新しい未来を、オンラインとオフラインのハイブリッドで開催しました。
藤村先生は、映画配給会社ギャガ・コミュニケーションズ(現・GAGA)の創業者であり、現在は任天堂のコンサルタントや、実写ドラマ『ONE PIECE』のプロデューサーとして活躍しながら、DHUの特命教授をしています。
『スーパーマリオ』と『ONE PIECE』のおかげで、これからの日本のIP(知的財産)の未来が変わる、と話す藤村先生。日本国内にどれだけ強力なIPがあるのか、それらにどんな可能性があるのかを特別講義内で解説しました。
IPの全世界売上TOP25のうち、日本IPが10個ランクイン
IPビジネスとは、映像、書籍、グッズ、その他ライセンス使用料などによって、IPを保有している企業が収益を上げることを指します。このIPビジネスの観点で、日本はアメリカとしのぎを削る大国なのです。
藤村先生が紹介したとある調査によると、2021年までにもっとも稼いだIPは『ポケモン』、第2位が『ハローキティ』。これは、『ミッキーマウス』『ハリーポッター』などを抑えての結果です。さらにランキングを見ていくと、第6位『アンパンマン』、第8位『スーパーマリオ』、第9位が『少年ジャンプ』作品と続いていきます。
このほかにも藤村先生は、日本IPのパワーを感じさせる事例として、『ゴジラ-1.0』の最新のニュースにも触れます。
『ゴジラ-1.0』は、アメリカでの邦画実写作品史上、最大規模の2,000館以上で上映。第4週目で米国興収が既に4000万ドルを超えており、日本の興収を上回ることは間違いないと言われています。日本IPによる経済効果が大きいことが分かります。
さまざまなIPがパワーを持ち始めている中、『スーパーマリオ』と『ONE PIECE』が2023年に日本IPハリウッド映像化で過去最大規模の大ヒットを生み出し、初めて全世界でブレイクスルーしました。
日本IPのパワーを世界に証明した2023年
このヒットは、Nintendo Switchビジネスに大きな影響を及ぼします。歴代の『スーパーマリオ』のゲームの売上が増加するだけでなく、同時期に『ゼルダの伝説 ティアーズ・オブ・ザ・キングダム』などの発売が重なりゲームソフトの売上が前年同期比の26%増。さらに、発売開始から6年以上経過しているハードウェアの売上が前年同期比13.9%増 となり、『スーパーマリオ』の映画化は、任天堂の業績に多大な貢献をしました。
そして、2023年8月に配信されたNetflixの実写ドラマ『ONE PIECE』は、藤村先生によると、Neflixの世界86か国“今日のTV番組”の首位を獲得し、『ストレンジャー・シングス 未知の世界』『ウェンズデー』などの記録を塗り替えました。『ONE PIECE』の成功によって、Netflixの加入者数が増加し、株主を大いに満足させたんだとか。
このほかにも、『すずめの戸締まり』『THE FIRST SLAM DUNK』など、近年世界で大ヒットしたIPの事例を紹介し、日本のIPが大躍進していることを紹介。藤村先生が言うには、各国のプロデューサーから日本のIPに対する注目が大きく上がってるそうです。
待機作品が増えても、完成する確約はない?
続いて藤村先生は、日本IPが海外から注目されている事例として、ハリウッドでの実写映像化の話が来ている公開待機作品についても紹介。
『ワンパンマン』『NARUTO』『進撃の巨人』『GANTZ』『僕のヒーローアカデミア』『君の名は。』『ガッチャマン』『宇宙戦艦ヤマト』『ゼルダの伝説』『ハローキティ』『羅生門』など、さまざまなジャンルのIPが実写映画化を予定しています。
藤村先生は「未発表のものも含めると、おそらく日本IPの映像化が100作品以上待機している」と話します。しかし『AKIRA』のように、実写映画化が発表されたにもかかわらず、完成に時間がかかっているケースがあるのも事実。
「日本IPがハリウッドで映画化されるのは、簡単なことではありません。まず、ハリウッド作品として映像化しませんかと話が来ても、あくまで企画開発を優先するためのオプション・パーチェス・アグリーメント。本契約に至るのは、良い脚本ができてからです。それからハリウッドのスタジオなどが権利を購入して初めて、映像制作が始まるというのがスタンダード。ちなみに、オプション契約の段階から権利購入に至るケースは約15%と言われています」
ただし、『スーパーマリオ』や『ONE PIECE』が世界で記録的大ヒットの結果を出したことで、日本IPの信頼度が増し、今後実写化する確率が高くなると藤村先生は予想しています。
『ONE PIECE』原作者・尾田先生による製作総指揮
藤村先生は、IPが映像化に至るまでの一連の流れを幾度となく見てきており、特に今回の実写ドラマ『ONE PIECE』のプロデューサーをする中で、痛感したことがあると言います。
「IPを映像化させる場合、ファンを味方につけなければ絶対に成功しないんだということを改めて実感しました。聞いたところによると、Netflixの調査では『ONE PIECE』の実写化発表に対して、反対する声が多数を占めていたそうです。ですが、製作総指揮として尾田先生が加わったことで作品の質が担保されたり、先生が手書きで告知メッセージを作成してくださったりしたことで風向きが変わりました。今後は、原作者を巻き込みながら日本側の立場にたって制作をしていける人材の育成が必要だと思います」
世界に日本のIPを届けるのは、若い世代の皆さん
最後に、DHU生へ向けてメッセージが送られ、特別講義が終了しました。
「IPの埋蔵量で言えば日本は世界最大規模であり、マンガ・アニメ・ゲーム・小説・おもちゃなど幅広いジャンルで、開発されていないIPがたくさんあります。もしクリエイターとしてIPを映像化する立場になるのなら、我々と一緒に日本IPの素晴らしい未来を作っていってほしいです。もちろん映像制作に直接携わらない道を選んだとしても、好きなIPがあれば積極的に発信してほしい。小さな声であっても、いつか世界中のプロデューサーが見つけてくれるはずなので、日本の素晴らしいIPが世界の人にも届くよう、声を上げてもらえたら嬉しく思います」
左から、藤村先生、杉山 知之学長、デジタルハリウッド株式会社代表取締役社長兼CEO 吉村 毅